菜園アドバイザーあぐりんのつぶやきプラスα

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有機農業について

 

今回は有機農業について書いていきます。

正直、興味がある人でないと難しい話かもしれませんが、大切な部分なので是非この機会に読んでみてください。

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 1.有機農業に関わる歴史

1935年 岡田茂吉 無肥料栽培提唱(1950年から自然農法に改名)

1938年 福岡正信 自然農法(わら一本の革命)

1962年 レイチェル・カーソン沈黙の春

1971年 日本有機農業研究会発足 (一楽照雄)

1975年 有吉佐和子『複合汚染』

1986年 チェルノブイリ原発事故

1992年 有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの制定

2001年 有機JAS制度

2006年 有機農業推進法施行(議員立法) 

2021年 「みどりの食料システム戦略」

政策方針決定

 

2. 有機農業の始まり

大昔はもちろん農薬も化学肥料もなかったわけですが、放牧した家畜の糞により牧草などの生育差があることなどは気づいていたみたいです。

ただ有機農業の始まりとなると、人間が人工的に堆肥を作り施すようになったことがポイントとなります。

「堆肥を入れることによって土壌微生物の種類も量も豊富になり、土壌の栄養バランス、通気性、保水性がよくなる。その結果、作物は健全に育つようになる」

(アルバート・ハワード、イギリス、1940年【農業聖典】)

インドール式堆肥化法を考案。

 

3.有機農業の定義

有機農業については、1986年に保田茂さんが、2006年には有機農業推進法で定義されています。

保田 茂(1986年)

有機農業とは、近代農業が内在する環境・生命破壊促進的性格を止揚し、土地―作物 (―家畜)―人間の関係における物質循環と生命循環の原理に立脚しつつ、生産力を維持しようとする農業の総称である。したがって、食糧というかたちで土からもち出された有機物は再び土に還元する努力をして地力を維持し、生命との共存と相互依存のために化学肥料や農薬の投与は可能な限り抑制するという方法が重視されることになる。」                         

 
有機農業推進法

有機農業とは、化学的に合成された肥料及び 農薬をしないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷を出来る限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。

 

【参照】農水省HPより有機農業の推進に関する法律

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/d-1.pdf  

有機農業の有機には有機物という意味合い以外に、物質循環や生命循環などの有機的循環の意味も含まれます。

 

4.日本の有機農業の歩み

1970年代 高度経済成長と農業近代化のひずみから、それに対しての拒否・疑問が生じるようになる

1980年代 消費者の期待と拡がり(生産者と消費者との提携)。

有機栽培の生産技術の可能性から産地としての展開

1990年代 農業に対する社会的要請・期待・位置づけの転換

2000年代 有機JAS認証制度の発足

有機に対しての間違った認識が逆に拡がった!?

日本国内の有機ほ場の面積はあまり拡大していない。

2010年代 有機農業新時代

有機農業推進法が施行され、ついに法律に有機農業とはという説明がなされ、国や自治体に有機農業を推進する責務が生じることになった。

 

5.有機JAS認証制度

有機表示の氾濫と混乱により1992年「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を制定したが法的拘束力がなく不十分であった。

1999年にJAS法が改正され、有機農産物の検査・認証制度を導入、有機生産の基準等を規定した有機JAS規格を制定、認定された生産者のみが有機マークを貼付し有機表示が可能になった。

【参照】農林水産省有機食品の検査認証制度:農林水産省 (maff.go.jp)

有機農業は有機JASを取得しなくても出来ます。

ただ有機農産物として表示、販売できないだけ。

世の中には有機JAS取得有機農家と、非有機JAS取得有機農家が存在しています。

 

6.有機農産物とは

たい肥等で土作りを行い、種まき又は植え付けの前2年以上、禁止された農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培する。栽培中も禁止された農薬、化学肥料は使用しない。遺伝子組換え技術を使用しない。(有機JAS法)

 

要するに今現在、農薬、化学肥料を使用していないだけではなく、過去についても問われるということです。

 

7.有機農業のめざすもの

【安全で質のよい食べ物の生産】

安全で質のよい食べ物を量的にも十分に生産し、食生活を健全なものにする

 

【環境を守る】

農業による環境汚染・環境破壊を最小限にとどめ、微生物・土壌生物相・動植物を含む生態系を健全にする。

 

【自然との共生】

地域の再生可能な資源やエネルギーを活かし、自然のもつ生産力を活用する

 

【地域自給と循環】

食料の自給を基礎に据え、再生可能な・エネルギーの地域自給と循環を促し、地域の自立を図る

 

【地力の維持培養】

生きた土をつくり、土壌の肥沃度を維持培養させる

 

【生物の多様性を守る】

栽培品種、飼養品種、及び野生種の多様性を維持保全し、多様な生物と共に生きる

 

【健全な飼養環境の保障】

家畜家禽類の飼育では、生来の行動本能を尊重し、健全な飼い方をする

 

【人権と公正な労働の保障】

安全で健康的な労働環境を保障し、自立した公正な労働及び充分な保障と満足感が得られるようにする

 

【生産者と消費者の提携】

生産者と消費者が友好的で顔の見える関係を築き、相互の理解と信頼に基づいて共に有機農業を進める。

 

【農の価値を広め、生命尊重の社会を築く】

農業・農村が有する社会的・文化的・教育的・生態学的な意義を評価し、生命尊重の社会を築く  

(日本有機農業研究会・2000年有機農業に関する基礎基準採択)

単に農薬、化学肥料を使わないということだけではなく、もっと色々な事を考えたり、配慮しましょうねということです。

 

8.まとめ

有機農業は農薬や化学肥料を使わないという所だけ注目されがちですが、元々の歴史は浅く、堆肥の発見もポイントでした。

 

日本の有機農業も単に有機物を施肥するだけではなく、有機的循環を重視し色々なことに配慮することも含まれています

 

最近では、農水省は農業の環境負荷低減と生産基盤強化を目指す政策方針「みどりの食料システム戦略」を決定しました。

これには2050年までに有機農業を全農地の25%(100万ha)にするという数値目標を盛り込んでいます。

 

一般消費者の方にも表示の問題だけに留まらず、少しでも理解していただけたらと思います。

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